火のある暮らしを、家づくりから。
「火のある暮らしは毎日が豊かになる」と考えています。
手間はかかりますが、その分、空間の落ちつきや時間の流れがゆったりと感じられる味わい深い暮らしがそこにはあります。そんな家づくりや石窯づくりを理想としながら私たちは仕事を手がけています。
私は若い頃、住友林業に就職し、主に現場監督を経験したあと退職、そしてカナダでのログビルダー修行、帰国後、信州・長野で手づくりライフを実行しながら、大工や家づくりをしてきました。そのような経験が今の仕事のスタイルにつながっています。
私が家づくりや、石窯づくりで何を大切にしているのか、少し書いてみようと思います。
住友林業で働いた5年間
私は大学卒業後、多くの人と同じように安定した就職先を求め住友林業、いわゆる大手ハウスメーカーに勤めました。そこでは現場監督を主な経験とし、設計にも携わりました。工程管理、品質管理と大企業のノウハウを学ぶ一方、現場ではいろいろな職人さんと直接関わり、多くを学ぶことができました。そこで務めた5年間の経験は、今思っても大変貴重な時間だったと感謝しています。
しかし、当時は一通り経験したと思いつつも、このままこの道を進むことが本当に自分の将来の姿なのか?昇進して部下を管理していく・・・確かに安定は保証されるのかもしれない、でも、それが望みなのか?と自分に問いました。
本当にやりたいことは「ものづくり」そのもの、一棟一棟に深く関わる理想の空間づくり、そして、そんな暮らしをすること。夢がはっきりしたことをきっかけに退職を決め、カナダに渡るという新たな一歩を踏み出すことになりました。
26歳で会社を辞め、カナダへ
住友林業を辞めたのは26歳のときです。サラリーマンから職人へ転職し、ログビルダーになるためカナダへ渡りました。
1994年、結婚してすぐ、夫婦でバンクーバー島へ。パークスビルで世界的ログビルダー マイルス・ポーター のもと、約1年近く修行をしました。そこで学んだのは技術だけではありません。師マイルス・ポーターや、バンクーバー島で手づくりをしながらナチュラルに暮らす人々の生き方そのものに、強く影響を受けました。
いつの日か 「日本に帰ったら、そんな暮らし方をしたい」。
そう思ったことが、夢になり目標になりました。
信州・長野で始めた「手づくりの暮らし」
1995年、父の故郷である信州・長野県に移住しました。そこから長い時間をかけて、手づくりの暮らしを実践してきました。
当初の敷地は、何も着手していない状態でした。ぬかるんだ土地の地盤改良から始まり、水道つまり、井戸掘り、給水工事、そして住宅や工房づくり…。便利な暮らしではありません。でもその分、暮らしの中で覚えることが多く、考えることも増えました。
そのとき支えになったのが、ひとつの気持ちです。
「お金が無いなら、作ればいい。」
「無い物は作る。」
工夫し、試行錯誤し、手を動かし、それを楽しみながら暮らしを成り立たせてきました。
何もない土地でゼロから始め、最初は「世界一小さな住宅」と呼べるほどの小さな家をつくり、その後は家族でもう一度、二番目の我が家もつくりました。その経験を重ねるほど、私はこんな思いに至るようになったのだと思います。
鳥が自分で巣を作るように、人も、自分の手を動かして作る住まいがあってもよいのではないか。
そして、手間をかけた分だけ、その暮らしを大切にし深くなる。
この「手づくりの暮らし」で得た感覚が、今の家づくりの考え方の土台になっています。
施主も参加する家づくりへ(セルフビルド/ハーフビルド)
家づくりは「全部任せる」というのが普通ですが、「一緒に関わってつくる」のもありだな。と考えるようになったのは、この手づくりの暮らしが原点にあります。
家づくりは、当然予算が重要です。ただ、お金だけで決まるものでもないとも思っています。建築は方法を工夫できます。段取り、素材の使い方、納まり。工夫すれば、理想に近づける余地が残ることがあります。
そういう考えから、私はこれまで セルフビルドやハーフビルド といった方法を何度か実行して来ました。施主様にも工事に参加していただき、「お願いして終わり」ではなく、自分の手を動かしながら一緒に形にしていく家づくりです。
また私たちは、設計から携わり、職人としても多能工として、可能な限り多岐にわたる工事を自分たちで直接行います。分業が一般的な時代に、少し特殊なやり方かもしれません。
それでも私が大切にしているのは、セルフビルドであっても、完成する建築の品質は落とさないことです。必要な強度や精度を満たし、仕上がりも美しく。「楽しく参加する」ことと、「高いレベルを目指す」ことを両立する家づくりに、これからも取り組んでいきます。
そして建築が本来もっている力――少ないエネルギーで快適に暮らすための工夫も、ますます重要になってきています。場合によっては自然エネルギーも取り入れながら、冷暖房もできる限りエコな方法を探し、「心地よさ」と「省エネ」を両立する家づくりを目指しています。
例えば 薪ストーブやロケットマスヒーター といった、火の力を暮らしに取り入れる方法も、そのひとつです。
石窯と建築の共通点
私は、建築の仕事とあわせて、石窯づくりにも取り組んできました。どちらも「暮らしの時間」、「幸せな場」をつくる同じ仕事。そんな思いで取り組んでいます。
この二つの仕事には、熱を逃がさないという共通点があります。石窯は、熱を逃がさず蓄えることで、はじめて性能が出ます。そして建築も同じように、いま強く求められているのは省エネ――つまり 熱を逃がさない家 だということです。
そして、どちらも 幸せな日常を生み出すもの 、という共通点があります。家は、家族が毎日を過ごす場所です。石窯は、火を囲む時間をつくり、人が集まり、会話が生まれます。どこかへ出かけなくても、家そのものが楽しい場所になる。私はその価値をとても大切にしています。
少ないエネルギーで快適に暮らし、その場所で心がほどける時間が生まれること。
石窯づくりも家づくりも、同じ気持ちで向き合っています。
石窯を作った。火がある暮らし
2005年、最初の石窯(ピザ窯)を作りました。この石窯をきっかけに、石窯づくりにも本格的に取り組むようになりました。
その後、熱の性能や組み立てのしやすさを目指して改良を重ね、2009年に組立式石窯キット SW100LD を完成させました。
その後も改良と製作を続け、現在は SW130PD という、ナポリピッツァを焼くのに最適な大型窯も扱っています。
また今後は、ロケットストーブに使われる ヒートライザー の燃費効率と熱の立ち上がりの早さを活かし、ヒートライザーを熱源とした小型窯 SW60RF の開発にも取り組んでいます。
石窯には、不思議な魅力があります。存在感もありますが、それ以上に、人を引き付けるものがあると感じています。火を囲む時間には、家族や仲間が自然と集まります。暖炉と同じように、火には人の心を癒やす力があります。
どこかへ旅行に出かけるのも素敵なことです。ただ、自宅そのものが癒やされて楽しい場所であることは、同じくらい幸せなことだと思っています。家族と過ごす時間は、かけがえがありません。
私はこれからも、そういう時間と空間につながるものを、建築と石窯の両方でつくっていきたいと思っています。
製作者プロフィール
佐々木成司
出身地:神奈川県
職業:大工・ログビルダー/一級建築士
木造建築 設計・施工/石窯の設計・製作・施工
もしよろしければ
私が日々取り組んでいる仕事を、こちらにまとめています。
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